「水が合わない」」ってよく言う。
地方から出てきた人がまず最初に言うことは、「東京の水が合わない」なんじゃないかと思う。
水質検査を受けてから井戸水を使うつもりだったので、この家ではまず水道水でスタート。
水が、手が切れるほど冷たい。お風呂に入ると、出たあとに体中の肌がカサついて、それが結構つらいものがある。それになんだかいくらお風呂に浸かっても寒くてしょうがない。そんなに遠くに移動してきたわけじゃないのに水が違うのかな…? なんか塩素の量とかが地域によって濃くなったりでもするんでしょうか?
工務店さんが、水道の配管がうまくなかったということで、工事に来ます。水道水と井戸水をバルブの明け閉めで切り替えられるように頼んでおいたのですが、それがちょっと違うように配管されていたよう。水質の悪化や、万一、井戸が枯れた場合には水道水にできるように考えてあったのです。水質検査の結果がオーケーなら、井戸水を使うということで。
「井戸水が使えるようになりますから」と言いながら、配管工事の作業をしているおじさん。
さぁ、あとは、水質検査を受けて、よければ切り替えて井戸水生活だ!
しかし、その夜、お風呂に入ると、
「あれ? 違う」。
昨日までと違う。お湯がまろやか。それに、あったまるような…。水圧もちょっと下がってる。これはもしかして…。
検査の結果が出るまで水道水で生活するつもりだったのが、井戸水が流れる方のバルブを工事のあと開けてあったのです。
思ったよりも早く、井戸水風呂を体験。
まいっか。
近所の人たちもずっと使っている井戸水なんだし。
お湯をなめてみます。
「あまい…?」
甘いんです。井戸水。
水が甘いというのは、正直、初めて思いました。いろいろな温泉にも行って、結構お湯をなめてきたのですが、温泉地のお湯は苦いことが多い。甘いというのは…。ほ、ほ、ほたる来いって感じ?
お風呂上りも、それまでのカサカサ感やピリピリ感も残らず、潤っているような…つるつるすべすべしているような。すごく違う。湯冷めもしない。いつまでも体があったかい。水を出しても手が切れるような冷たさを感じることもない。いやホントに違うんだなぁ…。なんなんだろうこれは。なんでこんなに違うんだろう井戸水。
翌朝、気をよくして、井戸水でお茶を入れてみます。
「……おいしいけど…ちょっと臭いがあるような気も…」。
昨日、お風呂でなめた水と少し違うような気がします。
どうしたらいいんだろう、沸騰させてから使うとかすればいいのかなぁ…?
そしてまた、夕方、お風呂に入ってみます。やぁ、やっぱりあったまる。
また、なめてみます。
やっぱり…甘い。
おかしい、朝入れたお茶の水と、味が違う?
あ! 井戸水って、朝の水と、夕方の水と、味が違うんだ!
なんでかな、ポンプに汲み上げている水を朝は使うことになって臭みが出てしまうのかな?
それとも、自然界の水は、時間によって味が変わるものなのかな。
朝は、しばらく水を流してから使うといいのかも。
そういえば、おいしいラーメン屋さんは、朝の水はマズイから、5分間くらい水を出してからスープに使う水を取るって言うしね。
うーん、一日の中で味が変わるのか? 井戸水…。
こんどは、朝、しばらく水を流してから汲んで、コーヒーをいれてみます。
う。うまい。
こんなにまろやかな味のコーヒーって、しばらく飲んだことなかった。
コーヒー専門の店で飲むようなコーヒーの味。
舌に刺さるような感じが全然なくて、口のなかがほわっと包まれるような。
井戸水でご飯を炊いてみます。
「おいしい、おいしい」と言って、ご飯ばかり食べて三杯もおかわりしたアトム。
小食のアトムがこんなにご飯を食べるなんて、初めて…。
今までのご飯は、なんだったんだろう?
これからどうなる井戸水生活。