「つくれますよ、ヒノキで」
「えぇぇぇ~! ホントですかぁ~!」

きっと、木の浴槽って高いよね。この予算じゃ、小さな浴槽か、安めのサワラでつくるとかなんじゃないのかな。でもとにかく、お店を見るだけでもいいから、行ってみようよ、伊藤風呂店さんへ。
根津の町を歩いて、お店につきます。浴槽を設置するために出かけていてお忙しいご主人。会えそうにないと聞いていました。ところが、ちょうど仕事の合間の時間だったらしく、お店でお話することができます。ミカンやおまんじゅうをいただき、子どもたちとつまみつつ、木のお風呂の話。
シリコンで木をつないだ古代ヒノキの浴槽のボロボロな残骸。機械でつくった木のつなぎめがガクガクになっていて浴槽の役目を果たさなくなった木片。糊をつかって木をつないで浴槽をつくったために体を壊されて仕事をやめた同業のお風呂屋さんの話。「やっぱり、木の浴槽は、手でつくらなきゃダメよ。シリコンだとか糊だとか使ったらダメよ」。
カンナで手作業で木を削ると、木が光るという。釘もひとつひとつ手づくりされているそう。
木曽ヒノキと青森ヒバの特徴もいろいろとうかがいます。青森ヒバは使う木の質によっては割れてくることもあるのだそう。でもカビは生えにくいし木の香りは長く残る。ヒノキは反ったり割れたりする心配がなく、とくに木曽ヒノキはいろいろと問題がないのだそう。木曽ヒノキといっても人間が植えた木だと、また性質が違うのだそう。やっぱりお風呂はヒノキなのかなぁ。「通気がよければヒノキでもカビは生えません」。
とどまることのない、木の話。
話しこんでいると、いつのまにやら子どもたちが作業場の奥のお茶の間に上がりこんでいます。しかも、ウランの前にはお茶碗、手にはお箸が…。タマゴやハムをつついています。奥様が子どもたちの相手をしてくださって、なんとご飯までいただいちゃっているじゃーありませんか! なんだか嬉しそうにおとなしく座っている子どもたち。
「木の浴槽は、保温性がとても高いです。3日ぐらいは…」。えー! 3日も! いつまでもお湯が冷めないので、翌日でもそのまま入れるほどだそうです。お湯をちょっと継ぎ足せば3日ぐらいは入れるのだそうです。3日入ったら、朝お湯を抜いてワラかタワシで洗って乾かして、また夜お湯を入れればいいそうです。あ゛ぁ~ 設計の最初の頃、追い炊きできる木のお風呂なんか探したりしてたワタシって、いったい…。
多いとは言えない予算だと思っていたのですが、木曽ヒノキで、1200×700ぐらいの浴槽をつくっていただけることに。反りにくく乾きやすいサワラのふたがつき、桶などもオマケにつけていただいて、設置料も込みでつくっていただけるなんて…。ウソみたいだねぇ…。だって、木のお風呂だよ。毎日が温泉宿みたいだよ。ていうか、井戸水入れるから、ほんとに温泉かもしれないねぇ。東京の街中の家で、手づくりの! 木曽ヒノキの! お風呂に毎日入れるなんて…。
奥様が子どもたちの相手をしてくださって、お茶の間ですっかりくつろいでいる子どもたち。なにもかも自分の手でつくられるご主人の尽きることのない木の浴槽づくりのお話。
青森ヒバと木曽ヒノキとサワラの木の見本をいただいて、なぜか柿もひと袋いただいて、伊藤風呂店さんを後にします。
もしも、こんな家をつくろうと思わなければ、出会うはずのなかった、数多くの素晴らしい人々。