2005年8月16日

こんな家


「こんな家、一生のうちに何度もできない」。そう、建築家さんが言った。

建築設計事務所Sさんに、毎週のように打ち合わせに行く。メールも何度も往来する。露天ぽい風呂がなかなか決まらない。だから家のプランもなかなか固まらない。固まらないつつも、各部屋の4方向を見た図面とか、仕様や設備の表とか建具とかを書いていただく。

あれはまだ、かあちゃんが、建築雑誌をつくっていた頃、20世紀の話。「ハウスメーカーの家が入らないような、ちょっと狭小の土地とか変形の土地とかって安くなっているから、そういう土地を買って、設計にそのぶんのお金をかけて建てると、同じ金額でもいい家ができるよ」。そんな話を、建築カメラマンさんとかと、なにかとしていたものだった。一番いいのはウナギの寝床型の細長い敷地。やっぱり『住吉の長屋』が印象的な存在だったのだろう。時はコンクリート打ちっ放し全盛の時代。

それから、あてもなく、かあちゃんの頭の中には、いつか建てるウナギの寝床型の敷地の「こんな家」のプランが練られていった。場所は6mの道路に接している東南角地の傾斜地。玄関は引き戸全開で、玄関ポーチの上がグレーチングで…これは建ぺい率に入らなくて…傾斜を利用して駐車場、その上がキッチンで…。どこかで知恵を仕入れるたびに、あてもない「こんな家」に組み込まれていった。

さて、現実に、そろそろ家を となった時。建築条件付でない土地なんて、ない。交通量が少ない広い道路に面していて、いい方角の土地なんて、さらにない。そんな都合のよい土地なんて、あるわけない。だから、かあちゃんは「こんな家」は、妄想に終わるのだろうと思っていた。

ところが、突然、あった。
理想的な立地に。ウナギの寝床が。建築条件なしが。
「あっ……」と思った。
角地ではなかったけれど、これ以上の場所はありえないと思うところに。なんであるんだろう。

ほぼ固まってきたプラン。
2階リビングにはなったけれど、かあちゃんの「こんな家」の要所要所が入っているプランにはなっている。かあちゃんの「こんな家」は、子どもがふたりできることを想定してなかったから、実際のプランでは、いろいろと変わってきている。

見積りの精度を上げるために、固めたプラン。出る見積りはおそらく予算を軽くオーバーするだろうという、建築家さんの読み。でも、「だいじょうぶですよ。おさまりますよ」。

かあちゃんの「こんな家」妄想を、実は、とうちゃんは、知らない。
(今ここで知るわけだけれど)。


[この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます]

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
※ 下記URLの大文字「MT」を半角小文字「mt」に変換してご利用ください。
http://kurashi-no-shiori.com/cgi/mt/MT-tb16.cgi/1086

コメントする