建築設計事務所S
その建築設計事務所は、オフィスが数多く入る都心のマンションの一室にあった。
マンションの入り口に表札はなく、ここでいいのか、とうちゃんが確認の電話を入れる。アトムとウランを連れて、エレベーターで昇り、開け放たれた部屋のドアを入る。
早速、土地に関する書類や資料などを机に並べるとうちゃん。ところが、建築設計事務所Sの建築家Aさんは、その書類に目もくれず、「昨日は子どもの保育園の父親の会で飲んでね…」と世間話のような話を始める。
世間話のような話は続く。とうちゃんが、要望リストと「こんな生活」を事前にメールで送ってあった。その中に、かあちゃんがデザイナーをしていたことが書いてあった。そのためか、ある著名なデザイナーの方と一緒に仕事をしたときの話などをされる。
「金髪に染めた人なのか、どんな服を着ている人なのか、それによって、その人が住む家は違ってくる」。作品集の写真を見せていただくと、共通した作品のスタイルがあるというわけではない。むしろバラバラなのだと。住む人によって、まったく違う家になるからだという。
「今は箱みたいな家が多いけれど、いつの時代も子どもが描く家の形は四角に三角の屋根が乗っている家」。
「お風呂がタテになっていたっていいんだし。極端な話、ベランダの真ん中にあったっていいんだし」。いろいろ話をする。
「よし、じゃあ…やってみるか」。
話の最後に、初めて、敷地の図面を見られる。「おもしろい敷地だねぇ!」
最初のプランができたと連絡があったのは、それから2日後だった。
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