2005年6月14日

井戸発掘


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「今なら井戸が見られますよ」。未来のお隣さんから連絡があった。

子どもたちを連れて見にいくと、敷地のはじっこが半円に掘り下げてあり、その真ん中に、直径20cmほどの管が埋まっていた。お隣の井戸のにごり水の原因を探し直すために、ウチの敷地の気抜きパイプのあった場所を掘ってみたところ、こちらの敷地からも井戸の管が出てきたので、その管の穴から井戸の奥の土砂やゴミをきれいに掃除して、管を埋めなおしたのだという。

丸い井戸が、お隣さんとウチの敷地をまたぐように、昔から実はあったのだ。この井戸からはふたつの管が生えていて、何十年か昔は共有で使っていたのだ。お隣はずっとその一方の管を使い続けてきたけれど、ウチの敷地側のもう一方の管は、前の土地の持ち主によって埋められてしまってた。それを誰も知らないまま、長い年月が経っていたのだった。

「井戸水は冬は暖かくて、夏は冷たくて、いいですよ。コーヒーもお味噌汁もとてもおいしいですよ」。ご迷惑をおかけしているはずのお隣さんが、嬉しそうに、発掘されて手直しされた井戸の管を見ながら、そう言ってくださった。「もう今は井戸を掘る人がいないから、ね」。もし新たに井戸を作ろうと思っても、現代ではなかなか難しいものなのだと。「あとはポンプを乗せれば使えるのよ」。

もしも、この土地が半端な土地でなければ、適当な建売を上に建てられて売られこの井戸は埋められたままだったのだろう。もしも、古家つき土地が売られる前に不動産屋の方で更地渡しにしていれば、使われるあてのない井戸は撤去されて埋められたのだろう。遺跡が出て工事が中断するかもしれないので解体を急いだために、設計の前の段階で井戸のあることがわかった。これが普通なら設計が進んでから解体していたのだろうから、もしそのときに発見されていれば大幅な設計変更になったか、発見されていなければ井戸の上の緩い地に家を建ててしまっていたのだろう。もしも、解体の重機が、気抜きの管をガツンと叩かなければ、お隣の井戸水が濁ることはなく、そのまま井戸の存在に気がつかずにいたのだろう。もしも、この土地を買ったのが私たちでなければ…。いくつものいくつもの偶然が重なって、井戸は何十年かの時を経て発掘された。

私たちは、この井戸を再生する。


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コメント[2]

TB、ありがとうございます。関連書籍まで掲載されていて、とても勉強になります。

surugakinoxさん、コメントをありがとうございます。

関連書籍は、随時いろいろと出てくるようにしています。でも、井戸の活用の本て、なかなかないのです。

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