未完の家
近所に建築中の○○ハウスの家が、あっという間に建ってしまった。
壁をパタパタと組み立てて、建物の形がみるみるできあがった。屋根がつき、フレームむき出しの家の内側で、内装工事が始まった。工期が限られているのだろうか、夕方暗くなっても工事用のライトをつけて中で作業をしている。ちょっと遅くなってしまった、子どもたちとの散歩の帰り道、ちろちろと中をのぞき見る。
工事用のライトに照らされた、家の中のフレームの、なんと力強く見えることだろう。もしあのフレームが木だったら、どんなふうだろう。つくりかけのものは、どうして魅力的なんだろう。
家の中のどこに柱があるのか、よくわからない家が多い。時には柱は邪魔者扱いされたりして、出っ張りのない壁が望まれたりもする。でも、よく考えてみると、自分の住んでいる家のどこに何があるのか、本当はどんな形なのか、知らないままそこに暮らすというのは、なんだか気味が悪いことのようにも思える。
壁に貼る石膏ボードって、なんなんだろ。なんで石膏を板にして貼ってんだろ。壁紙ってなんなんだろ。なんで紙に接着剤つけて貼ってんだろ。いやそれは、燃えにくくするためとかいろいろ理由はあるんだろうけれど、今の時代にそれはどうしても必要なことでもないし。
自分が住む家の形を見ながら育った子どもは、モノの形を知るだろう。柱があれば登ってみたりするだろう。
もともと、どんな建物にするにしても、柱や梁が見えるようにしたいと思っていた。でも、それだけじゃなく、構造がぜんぶ見えるようにしよう。構造をあらわしにする。柱と梁、隠すことなくそのままにする。
石膏ボードも壁紙もいらない。いらないものはいらない。
まるでつくりかけのような家。それがいい。完成させる必要はない。
柱と柱の間は、収納に利用する。内装にお金がかからなくなるぶんコストダウンにもなる。
「本棚が欲しい」という要望も出していた。すると建築家Aさんは「柱と柱の間に本を詰めれば断熱材になる」とおっしゃる。ほ、本が断熱材…。でも、これで心おきなく本を買って並べられるというものだ。今まで、荷物になって置き場所に困るからと、欲しい本を買わずにいたりもした。でも、この家は、本を並べれば並べるほど断熱効果が増す家にもなるわけで。
家の外側は、ホンモノの断熱材でくるむことにする。
「今までにない家になりそうだ」と建築設計事務所Sの建築家Aさん。
うん、かあちゃんも、そんな家、見たことない。
そして、この家を、建築設計事務所Sさんにお願いすることにする。



