M社のプラン
M社のプランができたそうなので、一家で事務所まで行った。
M社は、建築プロデュース会社だ。登録している建築家さんが設計してくれることになる。要望を伝えたり話をしたりするために、以前一度事務所へ行っている。担当の建築家さんと最初から話をすることができた。
出されたプランは1案。他社のT社では2案出してもらっていたので、とうちゃんは「1案だけ…ですか?」と聞く。「いくつも案を出すのは力がないんだと思いますね」と建築家さん。
プランの説明を受ける。平面的な図と、イメージ写真。図面に描かれた間取りは、なんとなく想像していた通り というかこの間取り図って、かあちゃんが自分で試行錯誤して考えて何枚も描いたうちのひとつとよく似ている。しかもそれは自分で却下してしまった図。でもそこは建築家さんなので、うまく納めて形にしてある。
コストを抑えるためには、内装を省くとか作業工程を省くとかいう方法をとっている。在来工法で、開口部はかなり大きく考えてあり、吹き抜けもある。
でも、プランは、容積率がずいぶんあまっていた。できればフルに使いたいのがこちらの希望だ。それもあって、このプランの家ではちょっと狭いなと、かあちゃんは思ったりする。
図面の説明をひと通り受けて、とうちゃんは、「これだけ……ですか?」と聞く。T社ではプランと一緒に分厚い見積書や仕様がこまかく出ている。M社では、どうやら、そういうものは、なにもないらしい。
「契約してもらえますか?」と聞かれる。とうちゃんは、「こちらも高い買い物をするのだから、資金の計画を立てられるようなものを書面で出してほしい」とかいうことを、いろいろと言っている。
図面だけを見せられて、「この予算でこれが建つでしょう。だいじょうぶでしょう」と口先で言われただけで、ゼロがたくさんつく金額の品を「はいじゃあ」と、買えるだろうか。家が建つまでのスケジュールも出してもらってないのに、ある日「これだけかかりましたからお金を払って」と言われて、すぐお金を出せるものだろうか? まぁ言ってみれば、建物の図面だけでは、ただの紙っぺらだ。その紙っぺらだけで「契約を」と言われても、場合によってはずいぶんと高い紙っぺらにならないとも限らない。とうちゃんのそういう発想もわからないではない。
M社と建築家さんに、そのあたりを詰めてもらうように要望を出す。
打ち合わせ中、子どもたちの相手は、M社のプロデューサーさんがしてくれていたので、時間いっぱい、かあちゃんも建築家さんと話をすることができた。
出してもらったプランは、「!」というかんじではなかった。でも、こちらの希望をそのまま盛り込んであるのだから、想像どおりの図が出てきても、それは当然といえば当然だ。むしろ、建築家さんとしては、こちらの想像どおりにつくったのだろう。
しかし、建築家さんに考えてもらって建ててもらうということは、おのずと、その建築家さんのカラーの出た建物になるわけで、かつてモノのつくり手側の立場だったかあちゃんが、建築家さんという他のつくり手が考えた家に、果たして気持ちよく住めるものなのだろうか? と、帰り道に、なんか深く考えたりする。



